SMX West最終日は、ちょっとリラックスしたムードでスタート。アメリカで行われるほとんどのコンファレンスは木曜日または金曜日、午後早めに終わるのが通例。週末を家族・友人と過ごせるようにという欧米人ライフスタイルです。
コンファレンスを通しての感想は、SEOのインハウス化が進んでいるということ。リンク購入に関する話題などは全くなく、実際にインハウスSEOチームを導入しているヤフー、マイクロソフト、Ciscoなどの企業の担当者の話も聞くことができ、層が厚くなっていることを感じました。
2/12のセッション
【Keynote Conversation: John Battelle】
最初にDanny SullivanがJohn Battelleと、Google Japanのスパムの話題を持ち出して笑いのネタに。
John Battelle氏の著書について: The Search: How Google and Its Rivals Rewrote the Rules of Business and Transformed Our Culture
Googleについて、20000人を超えて組織が大きくなりすぎ、海を沸かすようだと表現(海の一部でお湯を沸かそうと何かイノベーションを起こしても結果として何も起こらない)。
ある産業のモデルを考える時にメディア業界を例に取ることが多い。
メディア業界では下記の二点が成功のポイントだった。インターネットではどちらも非常に低価格で実現できるため、非常に効率がよい。
- Access to distribution(どうやって商品・サービス・コンテンツを消費者に届けるか)
- Access to tools and production(どうやって商品・サービス・コンテンツを作るか)
例として、100-400のジャーナリストがローカル紙(新聞)にはいるが、それでは今の時代はペイしない。そんなにいたら世界中をカバーできる時代。
Googleをはじめ検索エンジンは、今までメディア産業が作ってきたコンテンツのおかげでかなり利益を受けている。結果として、GoogleはSEO&SEMをはじめ様々な新しいビジネスを生み出したが、メディア産業の縮小化を生んだ。
Googleはメディア産業より今まで大きな恩恵を受けているのであるから、社会的責任としてGoogle.orgで社会貢献をもっと進めるべきではないか? メディア企業の買収など。
2004年にMicrosoftの検索エンジンシェアが10%になると予測した。
その当時Steve Ballmerと会ったが検索の話をしたところ、マイクロソフトはかなり検索ビジネスに真剣であることが分かった。Yahooを買収することはdistributionを獲得することになるが、検索の品質・コンテンツ・サービスが良くなければ長期的顧客は獲得できない。
YouTubeは世界第2位の検索プロパティであるが、今後文字で検索するのではなく、携帯電話を使用したり音や映像での検索も増加すると予測できる。
新しいマンマシンインターフェースとして自然言語検索が必要。頭の中で情報を操作する時に使うのと同じ方法で世界中の情報にアクセスできるように。双方向である必要はない。
(John Battelle氏は)最新の情報を検索するのにGoogleではなく、Twitter Searchを使っている。リアルタイムに人々の反応を知ることができ、コミュニケーションを取ることができる。例えばTwitter Searchで「lexus suv」を検索すれば、新車に関する口コミがすぐに分かる。
ComCastでTwitterがカスタマーケアのために使われている。これは非常に効果的だと考えている。
検索はdemand harvesting(要望・希望を満たすこと)によって潜在顧客の要望とサービスを結びつける。そういう意味で検索もブランドマーケティングの一環として考えなければならない。
billboard mode=過去のマーケティング(2001年に燃え尽きた。広告をいきなり掲出する),
demand harvesting mode=今の検索マーケティング(顧客の要望を満たす)。
これからはConversational Marketing(対話型マーケティング)の時代。ブランドにとって、オンラインでのエンゲージメントはまだよく考えられていない。オンラインでの対話に価値を与えるような方法がConversational Marketingと呼べるのではないか。
例えばステージでこうやって二人で話している時に突然IBMの人がやってきて、「IBMのサーバーは素晴らしい!」と叫んでも全くエンゲージメント=顧客に寄り添うということはできない。
それに対し、ワインでも飲みながら「IBMのサーバーって良いよね」という話をできる状況を作ることの方が大事。
【Up Close With Google AdWords Quality Score】
Speaker: Nicholas Fox, Google
Quality Scoreの基本的な説明。
Speaker: Craig Danuloff, ClickEquasions
Quality Scoreとは→効率的でない広告を罰し、効果的な広告主を優遇するもの。
Bid x Quality Score = AdRank
インプレッションシェアをチェックすること。広告が表示される可能性のあるページのうち実際に広告が表示された割合を示し、Bidが高ければ高いほど、QS(品質スコア)が高ければ高いほど多くなる。
- QSの決定要素
- →CTRがほとんど、関連性は影響が少なく、ページのロード時間などはほとんど影響しない。
QSにはキーワードQS、広告グループQS、アカウント履歴QSがある。
QSはリアルタイムに計算されている。サーチクエリそのものと検索者のロケーションに対して計算。
効果を迅速に出すには、効果が出ていないものを落とし、効果が出ているかどうか判断の難しいものは別の広告グループに移動させ、テストを行い、より高いCTRを目指す。CTRの低いものをCTRの高いものに混ぜると、全体としてのQSが低下するため、コストが高くつく。
ブランドが強ければ強いほど10-8のQSを得ることが多く、全体としてはブランドに関係なくQSのピークは7くらいになるのが普通。ブランド=高CTR。
広告主はGoogleに対してQSの透明性を求めていくべき。
Speaker: Addie Conner, Course Advisor
FACT or MYTHゲーム。QA形式で、○か×を答えるゲーム。
※安川注、テレビで見るのは面白いが、コンファレンスのネタとしてはどうか?? 半分くらいでほぼ全員が不正解となっていた。
※安川注、下記はすべて○(FACT)となるように、文章を書き直してあります。
- QSは賄賂を渡しても変更してもらうことはできない。完全に自動化されたプロセスとなっている。
- CPC=(競合する広告主より高いAdRank / QS)+$0.01だが、そのページに一つしか広告主がない場合はAdRankがないため、CPCは別の方法で決定される。
- 広告を変更しても、QSは保存され、広告を戻すとおおよそQSも元に戻る。変更によりQSが永久に失われるわけではない。
- マッチタイプはQSに影響しない。
- コンバージョン率はQSに影響しない。
- AdRankはランディングページの品質に依存しない。ただし、ランディングページの品質はFirst Page Bidには影響する。
- 特定のカテゴリのサイトやビジネスはQSでペナルティを受けるがブラックリストではない(データ収集/リードジェネレーション・ポイントサイト・マルウェアサイトなど)。
- ロングテールキーワードだからと言ってQSが低くなることはないが、あまりマイナーなキーワードはQSを計算する基準がなく暫定的に低めのQSが設定されるため、数が多くなると広告グループのQSにマイナスに影響する。それらは削除したほうがよい。
- Googleはキーワード検索が行われるたびにQSを計算する。
- コンテンツネットワークのQSには二つの種類がある。CPMの場合はランディングページで決まる。CPCはランディングページと過去のCTR(または似たサイトの過去のCTR)で決まる。
- 同じ画面に表示される広告主に対しての相対的CTRがQSに影響する。CTRの絶対値、例えばあるサイトのCTRが10%と高かったからと言って、QSが上がるわけではない。CTRはQSの90-95%を構成していると考えられる。
- GoogleがQSを決定するため十分なデータがない場合は、複数のリンクされたアカウントのデータを利用する。
- ランディングページQSは1か0。ある一定の基準を満たせばそれ以上は問題ない。
- キーワード、クリエイティブ、URLの設定が完全に同じであれば、全く新規のアカウントであってもQSは維持される。
- ランディングページのQSは2段階で、しきい値を超えているかどうか。しきい値を超えていなければペナルティを受ける。しきい値を超えていれば何の問題もない。
- QSは広告の最適化に最も重要ではなく、ROIで考えるべき。ROIの高いキーワードについて、QSを最適化するアプローチが正しい。
- QSとインプレッションシェアは関連している。QSが向上すると、ブロードマッチも「より」曖昧なワードに対してマッチするようになる。GoogleはCTRの高いキーワードを見つけて自動的にブロードマッチをチューニングする機能を持っている。
- 高いCPCを設定すると、高いQSを得ることができる。他の広告主より高いCTRを得ることで、QSは改善する。簡潔に言うと、他の広告主より高いCPCを設定し、CTRの高いクリエイティブを使うことでQSは改善する。
【Training the Company on SEO】
Speaker: Rand Fishkin, SEOmoz
SEOは開発が始まる前に実施せよ。
SEOの文化はしっかり根付かせる。ユーザー中心で、分析に基づいて進めるやりかたを徹底する。
トレーニングをマネジメントに必要だと思わせるには? SEOのROIを分析ツールで見せること、また実際にPPCを購入してROIを実際に確かめればよい。
- オーガニックの検索結果で上位を取った場合のCTR:
- 1位 42.13%
2位 11.9%
3位 8.5%
4位 6.06%
5位 4.92%
6位 4.05%
7位 3.41%
8位 3.01%
9位 2.85%
10位 2.99%
1ページ目 89.32%
2ページ目 10.18%
検索エンジンで発生しているクリックのうち、88%のクリックはオーガニック。
280億ドルが2007年にPPCで使われているのに対し、SEOには10億ドルしか使われていない。
Speaker: Melanie Mitchell, Folio Investing
社内にSEOを根付かせるには......
- トレーニングを作成し、テストを実施。認定プログラムを作る。
- ターゲットとなるオーディエンス(人)を定義する。トレーニング出席者の社内での役割によって行うトレーニングは異なる。
- ツールを提供する。キーワード調査を始めさまざまなもの。
- メジャメント(インデックス数、検索セッション数、直帰率、リピーター率、セッションあたりの平均PVなど)を作成し、継続的に測定させる。
Speaker: Stephan Spencer, Netconcepts
※資料はPPTで提供。
Speaker: Dave Lloyd, Cisco
Search = Conversion, Engagement, Traffic
Training = Behavior Change, Learning, Attentive Audience
トレーニングの対象→技術者・デザイナー、コンテンツ作成者、ステークホルダー・広報
Ciscoでは、キーワード調査、ランディングページ、リンク・ブログ・広報の各トレーニングコースがある
【Ask The Search Engines】
Speaker: Matt Cutts, Google
今日2/12はチャールズダーウィンの誕生日(200年前)。
重複コンテンツについて。
301を使ってURLのカノニカライゼーションを行うこと。ウェブマスターツールでwww付きとなしを分けたり、サイトマップで送信することもできる。
<link rel="canonical" value="http://example.com/page.html">
という新しいオプションにより、URLカノニカライゼーションを多少簡単にできる。ただしこれは保証されるわけではなく、ヒントのようなもの。対策できるなら、これを使わず別の方法を先にやったほうがよい。MTなどのCMSを使う人は、それらがアップデートされれうまで待ったほうがよい。
同一ドメイン内でしか動作しない。サブドメインは、またがることができる!
zeta.zappos.comをwww.zappos.comにマップできる。カノニカライズするページは、多少なら異なってもよい。<link rel="canonical">
で指定するURLはできる限り絶対URLがよい。またカノニカライゼーションのチェインは許されていない。
この機能はGoogle, Yahoo, Microsoftでサポートされる。
http://googlewebmastercentral.blogspot.com/2009/02/specify-your-canonical.html
>Keith Hogan, Ask.com
Sasi Parthasarathy, Microsoft
Priyank Garg, Yahoo!
以下、Mattが会場からの質問攻めに。
- Q. ペナルティを受けたサイトが他のサイトに301をかけたりリンクしたりすると、301されたほうは何か影響を受けるのか?
- A. Matt: 他のサイトに悪影響を与えることはできないように注意している。
- Q. Google Japanのペイドリンクについて
- A. Matt: この件について謝罪したい。ペイドリンクはよくないことで、他の会社と一緒なスタンダードに基づいて対応していきたい。このため、ページランクを9から5に下げ、この措置は当面継続とする。
- Q. 有料リンクについて
- A. Sasi: できる限り無効化している。Matt: やはり他の悪意のないサイトに影響が出るといけないため、できる限り無効化している。しかし、リンクの販売者については証拠がはっきりしていることが多いため、ペナルティを与えている。
- Q. オープンURLリダイレクタについて(※安川注、別ドメインのURLをパラメータとして渡すことにより、別のサイトにリダイレクトできるツールのこと)
- A. Matt: メールスパマーにかなり利用されているため、気をつけて欲しい。彼らは信頼されたドメインを欲しがっており、リダイレクタを使ってマルウェアを配布するサイトなど悪意のあるサイトに誘導しようとする。リダイレクタを用意する際には、サイト外に移動できないように設計して欲しい。
【Reporting & Scorecarding for Management】
Speaker: David Roth, Yahoo!
※安川注、途中から参加
SEO/SEMのROIをマネジメントに説明する場合は、お金で表現することが重要。SEO/SEMが十分ではないことで、いくら損しているかを金額に変換して見せる。
1ページでサイト・ビジネスの状況が分かるスコアカードを用意している。
Speaker: Duane Forrester, Microsoft
クリティカルなKPIとは?セッション数、PV数、そのセッションによってもたらされた売上金額を使っている。他の多くの指標はマネジメントには必要ない。
レポートを作成するのにどのようなデータソースを使っているか? Omniture, comScore, Hitwise, Enquisite, Conductor, Google Analytics, サーバーログとステータス。
※EnquisiteとConductorは素晴らしいツール
マネジメントが投げかけてくると予想される、答えにくいタフな質問に答えを準備しておく。シーズンのトレンド、突然のトラフィック増などをチェック。世界で行われているイベントが影響することもある。誰か社内の知らない人が何か変更を加えて、知らせなかったようなことはないか?
データのプレゼンテーション。相手を選び、相手に合わせて見せる情報の詳細度を選ぶこと。またデータからどのようなアクションを起こせばよいか示すこと。
Speaker: John Marshall, Market Motive
Webベースのダッシュボードは使わない(!!)。Excel, PowerPoint, Wordでレポートを作成し、メールするのがベスト。
以下のステップでマネジメント向けのレポートを作成。
- SEOデータをまず分析ツールから取り出す。
- 競合データをhitwiseやcomScoreから取り出す。これらの情報は分析ツールのダッシュボードでは手に入らない。
- 顧客にインタビューして調査結果を作成。
- データ処理の自動化?スコアカードを作成するのは作成者の頭脳であり、分析してデータに意味を見出すこと。したがって自動化する必要はなく、マニュアルでExcelでデータ処理することを勧める。